2003-01-01から1年間の記事一覧

会社の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

というわけで、会社納めである(仕事納めにあらず)。一年前も全く同じことを書いている。サラリーマンの日常に変化があってたまるか。昨年も一人きりになって錯乱し急速潜航中にバルブを開けたりして種々の修羅場を惹起したわけであるが(12/27日記を見よ)…

シンポ。そして暗い予言。

午後麹町JCII(日本カメラ財団)にて名取洋之助研究会のシンポジウム。重い本を引きずりながら持ってゆき、展示する。皆さん結構見てくれる。しかしずっとじんじん痺れて手がちぎれそうだ。紙というものは、重いものなのである。名取の写真は、端的に言って…

渡河作戦に臨む

某大大学院にちょっと顔を出していた頃の学生さん、N君と久々に再会。会食歓談。論文ネタ2本発表してもらう。なかなか面白い。歴史学の社会学化について感想を述べるが、文献史料操作中心にこつこつやる学術は全く孤立化の様相を強めるばかりで、孤独感を訴…

忙中閑ありて

終日、家に籠もる。先日赴いた、横浜美術館における「中平卓馬展」で買い求めた『中平卓馬の写真論』(リキエスタの会刊)を集中して読み、考える。中平卓馬の写真論作者: 中平卓馬出版社/メーカー: 《リキエスタ》の会発売日: 2001/04メディア: 単行本 クリ…

本日の会話から

「また戦争の話でしょ先生……もうやめましょうよ……」 「いつまでも言い続けるぞよ。冷戦が終結したあの頃にな、歴史が終わったと勘違いした者が続出したが、結局新たな「戦前」が始まってたに過ぎんということがようやく明白になってきた訳じゃからね」 「臨…

紙爆弾テロ

日本ムスリム協会が、会社宛に突然荷物を一箱送りつけてきた。当然の事ながら弊社にはイスラム教徒はいない(はずである)。時節柄、偏執長は荷物に不審の目を向け、「あれだろ、アルカイダは日本も標的にするって言ったんだろ、怖いなおい大丈夫か」とウロ…

青騎士の方へ

art

過日小金井で美術古書を扱っているえびな書店から届いた目録は、特集が「1920年代の美術」となっていた。ここの目録は見るところ古書業界の東の大関と言っていいと思うが、カラー口絵まであり、堂々の季刊である。もうなんだか読むだけで勉強になる。値段ま…

選択と集中

江戸期の豆本の撮影のため、国会図書館まで赴く。途中、江戸川橋近辺で超絶渋滞に嵌る。 左手に石切橋を見たまま、微動だにしない。鏡花が尾崎紅葉の息子の子守をさせられてこの橋あたりをぶらぶら歩いていた時、ふと川を覗くと、川底をこちらと平行してゆら…

シット・インのことども

例によって、と言うべきか、休み前に体調急降下、風邪なのか何なのか、連休中ほぼ臥所の中で過ごす。2日以上世間との交わりを絶っていると、どうも自分はこの世で無用の者なのではないかという思いが頭上の空間にむくむくと大きく膨らむ感覚が現れる。この感…

いまここにある戦場

広島の路上で米兵が撃たれ重傷、男が乗用車内から発砲 26日午前4時ごろ、広島市中区流川町の市道で、乗用車を運転していた男が、前を歩いていた米軍岩国基地所属の米国人男性海兵隊員3人に向かって拳銃1発を発砲した。 男は車から降り、1人の胸に銃を突きつ…

本日の不届者(二人)

生徒に模造刀振り下ろす 「礼儀教える」と中学教諭 大阪市住吉区の市立大領中学で今年4月、2年生の担任の男性教諭(54)がホームルーム中、鉄製の模造日本刀を男子生徒の首に振り下ろす動作をしていたことが24日、分かった。 同中学によると、教諭は「生徒に…

「大道」とは禅語からとられたそうです。

「森山大道──光の狩人」展観覧のため川崎市民ミュージアムまで赴く。日本における写真表現が一直線にミニマルなものに傾斜していくのと歩調を合わせるように、彼の存在感が増していったのが、この十年間だったように思うんですが、いかがでしょうか。 もはや…

高級昼寝館

art

午後、東京芸大美術館まで赴く。 『工芸の世紀』という展観が昨日から始まった。明治期の日本の工芸は、日本画や洋画に比べて忘れ去られたような感があるが、そのマニエリスティックな造形力は実に凄まじく、ウィーンやパリ、シカゴで開催された当時の万国博…

本日の会話から

「林達夫と村山槐多が京都府立一中で同級生だったの知っとるか」 「またそんな山口昌男みたいなこと。興味ないすよ」 「そうかね。結構驚いたがな」 「しかし先生と、このパターンは久しぶりですね」 「君は仕事が遅いから、しょっちゅう会っとるような気が…

激情に流されて

「哲学の劇場」からメルマガ「哲学の激情」が届く。順調な発行ぶりは重畳至極だが、なんとか隔週刊ぐらいにならんかなァ。大変なのは重々わかっていながら、無論勝手な希望である。メルマガ紹介・登録ページを見ていたら、なんとメルマガ命名者が私だという…

さらに失う

余計なことかも知れないが、ニューヨーク・タイムズのサイード追悼記事の最初の版と現在webにのっかっているのを何の気なしに見比べていたら、いくつか異同があることに気付いた。最初の版にあった、彼が「ユダヤ防衛同盟」のテロ対象リストに上げられていた…

E・サイード死去にあたって

以下は一昨日ニューヨーク・タイムズに掲載されたリチャード・バーンスタインによる追悼記事の世界最速弊研究所超訳である。かなりの長文になるが、9・11以降アメリカ内で彼の置かれた位置と、リベラルな立場からの彼の評価との現在の微妙な関係が読み取れる…

夜鳥

寒い。午前中、時折利用する近所の藪医者に赴く。この医者では、私が各種の薬を指定しなければならないのである。自分で治療しているようなものである。「今日はムコダインとPL顆粒でいいと思いますが」「あっソー」「3日分ほどいただけますか」「あっソー」…

似非剣ふたたび

綾瀬の東京武道館まで赴く。全日本剣道連盟居合道部会東京支部昇段試験会場、である。ぷはー。例によって時代錯誤の空気が漂い、傑作千万である。階段の踊り場に刀屋が店を開いており、なんか職人尽し絵の情景。目についた江戸期の無銘の新刀を一振、抜き払…

震災の記憶

数日来、地震の噂しきり。「予知」という疑似科学と科学の境界線上に発生する、噂の遠近法についてしばし考える。先日文化資源学会によって開催された関東大震災八十周年シンポジウムを参観したばかりだったので、思考の方向はより具体的な数値問題に傾いて…

記憶との再会

夕刻、駆け込んだファミレスで、一人淡々と食事する小学四年生ぐらいの少年に出会う。毅然とした態度で、背筋を伸ばし、ゆっくりナイフとフォークを使っている。物悲しい。その風情から、もはやそれが毎度のことであると窺える。郊外の住宅地の夕刻であるか…

もだえる鰐

アートンから『踊りたいけど踊れない』(寺山修司著・宇野亜喜良絵)が出て、あまりに唐突だったので、吃驚して購入。頭の片隅から離れることのなかった記憶と再会する。 ミズエは1と書くつもりだったが、手は2と書いてしまう。ヴァイオリンのお稽古のとき…

保存≒標本化

早朝、東京駅丸の内口にて、ちょっと前に竣工した日本工業倶楽部会館の改築/増築工事を検分する。横河民輔一味設計の佳作のファサードと内部ロビーだけを残して、背後に高層ビルをぶち建てた物件である。結論からいえば、ギリギリ合格ではないか。無論こう…

帰省中にて

実家の小さな書棚は、最早混交して、家族の誰が購ったものかわからぬ書籍類が無秩序に突っ込んである。以前も書いたような気がするが、我が母は私が失踪している隙に彼女にとっては紙屑同然の我が蔵書を疾風のように段ボールに詰め、ミッション系の児童養護…

盂蘭盆会in山嶺

終戦記念日、なぜか日本三景厳島神社の背景に聳える宮島随一の霊山、弥山の山頂で呆然としているわけだが、盆も盛りだというのに寒風吹き荒れ、人影もない午後5時半である。荒涼たるものである。正確に言うと、山頂から数十メートル下にある小振りな平坦地に…

本日飯田橋にてお好み焼きを食して突如甦る記憶

同級生のU君が、4トロ(新左翼セクト「第4インター」の通称)の機関誌を教室に持ってきて昼休みに見せびらかしていたので、ネタの張り合いに敗れるのが口惜しく、放課後さっそく広島大学横にあるウニタ書店に自転車を走らせた。左翼関係書籍が溢れる雑然とし…

夏と修羅

伊勢丹大古書市にて、新宿まで赴く。昨年同様、初日は書痴どものワンダーランドである。ぶつぶつ呟きながら戦前の児童雑誌ばかりカゴに突っ込んでいる長髪の若い男、並べられた絵葉書を超高速スクロールしているカッターシャツの爺さん(糊の利いたそのシャ…

夏の記憶ver.8.6

夏休み例年、この日の朝8時15分になると、市内中に鳴り響くけたたましいサイレンに叩き起こされた。夜更かし癖のつきまくった絶頂の時期、また暑さも絶頂の時期、窓から何から開け放って、汗まみれの浅い眠りの部屋を毎年、サイレンが突き抜ける。同時刻、平…

戦後教育の失敗@勝小吉

少年犯罪花盛りの昨今のようであるが、統計的には終戦直後の方が凄まじいだの、質の変化を見るべきだの、まあ御意見百花繚乱皆それなりに頷ける。しかし今日、勝小吉の『夢酔独言』(平凡社東洋文庫、平凡社ライブラリー)を読んでいると、戦後もクソもなく…

テレビに頽落

会社をサボって熱のある頭でテレビを見ていると、水戸黄門にまで腹が立つ。この脳天気な老人は、いつになったら幕府権力自体が内包している矛盾によって自らの直面する数々の困難が引き起こされているということに気がつくのか。延々繰り返される対症療法は…