キルビル

六本木ヒルズに赴く。午後7時を回り益々盛ん也。

一気に50何階だかに吹き上げられた勢いで今回は結論を先に述べさせていただくが、この森美術館MOMA展」の展示空間の貧相さは一体、なんであろう。照明は体育館の如く、床も同じく体育館の如く、周囲のカタカタ輻輳する足音と集中力を欠いた照明設計はまるで近所の富士見台小学校体育館で挙行された児童制作物展示会と同然の構えを呈しておるではないか。それともこの展示設計そのものが芸術作品の脱神話化に通底するなにがしかの批評性を有していると暗示したいのだろうか。だったら最初にそう言ってくれ。

あまりのそっけなさに、同行者は思わず「全部複製品かとオモタ」と漏らす。
展示後半部のコンセプチュアル・アート群については無論そのへん微妙な問題を孕んでいるが、ひょっとしてそこまで深謀遠慮があるのか。疑心暗鬼に陥る。懐かしい(私にとって)クルト・シュビッタースのタブローやらライトの椅子やら何やら、本来先日の高野山展以上に腹一杯になるであろう脈絡なきテンコ盛りであるはずだが、どうにも太田胃散を要す。

で、その後ようやく隣のクサマトリックスにデビュー(遅すぎ)。そして最初から最後まで笑い通しだった。しかしですね、これほど商業的なるものと相性が良い作家だとは今日まで気づきもしなかったのであった。結構好きですね。私。
ただこの展観も、現状の2倍の空間を要するように思うが。

拝観後の午後9時、多少虚脱して当ビル売り物の360度東京夜景を眺める。前日の強風でスモッグ吹き飛び、東京は無意味に煌めき、視野は関東平野を一望に収めていた。私は誰もが試みるように、我が陋屋の方角を推定して一心に目視し、数々のランドマークを視認した──ように思ったが、帰宅後パンフレットを見たら、その全てが、ことごとく、間違いだった。