忠太

所用ありて横浜・鶴見の曹洞宗大本山總持寺に赴く。しかし、何もかもデカイ。スケール感が狂う。敷地の一番奥にある大祖堂は千畳敷らしい。純然たる寺院建築だが、内部に柱が全く無いことからもわかるように、よく見ると構造的には巧妙だ。それもそのはず、この御堂は明治の人、伊東忠太の設計したコンクリート製の近代建築である。伊東忠太はあのエグイ印度風建物、築地本願寺の設計者でもあるが、こんな技も持っていたのである。

昼に僧侶たちとうどんを食う。一人の坊さんが、最近空手に凝っている、と言う。もう一人の坊さんが、自分の一太郎をヴァージョンアップすべきか、と真剣に私に問う。後から合流した坊さんが、業者の見積もりがどうのこうのと愚痴を漏らす。デカイ寺は組織もデカく、大勢の僧侶がサラリーマンのように勤務している。実に興味深い。

突然ですが、法隆寺の柱がエンタシスで遠くギリシャ神殿の影響を受けているという話をいまだに信じている方。あれは伊東忠太の唱えたシルクロード幻想で、建築史的には事実ではありません。法隆寺の柱はふくらんでもいません。今後ご注意下さい。(個人的にはそうであってほしかったが……)

伊東忠太を知っていますか

伊東忠太を知っていますか