Idle Talk

告知

6月に行われます、弊研究所恒例の講義にして談話会。 告知が出ましたので、お気軽に御参集いただければ幸いです。 「地霊」とはなにか――土地の記憶から歴史を読む http://www.tokyu-be.jp/seminar/2013070006YA05091.html 最近は地べたについてのお話がいろ…

告知

9月となりますので、弊研究所、晩夏の炉辺談話[耐熱処理済]の告知です。 景観に歴史を読む・入門編 http://www.tokyu-be.jp/seminar/2012070006XA40091.html 最近は地べたについてのお話がいろいろ人気のようですが、そんなような話やそんなようでない話な…

連想譚

古本まつりに賑わう神保町交差点から少々離れた場所にあるU書房に立ち寄ってみると、開け放った扉の内側に「ありがとうございました U書房は閉店致しました」の看板。見えている棚は営業中の姿そのままだが、そこに本は一冊もない。慌ててちょっと中を覗き込…

事故のてんまつ

先般の護衛艦衝突事故の謝罪のため行方不明者宅を訪れた艦長の写真を新聞各紙で御覧になった方も多いでしょうが、正面から撮られた艦長の制服左胸には略綬が一切取り外されておりました。既に罪人扱いというわけですね。それはそれとして今般の事故について…

呼称論(弐)

まことにシツコイようだが、カントクでもう一つ思い出した。知人のS君(年齢不詳・消息不明のため現職不詳)は私が小汚い倉庫でフォークリフトを乗り回していた肉体労働者時代、同様に肉体労働に従事していた同輩である。 ある日彼は何の前触れもなく、オレ…

呼称論

知人のY君(哲学者・推定34歳・金髪)が自宅近くの寿司屋に立ち寄った途端、そこの大将から二人称として「カントク!」と呼ばれっぱなしだったと仄聞するにどうにも笑いが止まらず、果たしてそれは如何なるカントクなのか、何物をカントクする存在なのかとい…

炎上

深更、ダイニングの床に遺棄死体の如き姿勢で横たわっている自分を発見する。卓上に屹立する「酔心」の一升瓶を酔眼朦朧として見上げながら、なにゆえこのような中途半端な時間に目覚めたのか不審に思うが、耳朶をつんざく、深夜には異様なブォー、ブォーと…

長雨に脳髄腐食哉

マツケンサンバがどうのと喧しいが、かつての東映時代劇を見ている目には何ら新鮮味無く、単に王道の継承あるいは狂い咲きではないかとフジワラ編集室相手に熱弁を振るう。旗本退屈男が刀を大上段に振りかぶった途端、ホリゾントの背景が七色の照明で安キャ…

古本に諭されるの記

成城で清談を終え、寄る辺なき中途半端な時間、脳内も半ば中途半端な思いのまま、久方ぶりのこの街を歩いて、ハタと思い出すキヌタ文庫。整然と御立派な邸宅が並ぶ町中に、ぽかりと浮かぶ古書店なのである。10年ほど前までは国分寺崖線の急峻な坂をアホみた…

もろもろ

青山ブックセンター(通称ABC)が閉鎖され、カルロス・クライバーが死んで、東京が異界に変じた熱波の7月でした。ABCの件は「はてな」にて歌会を開催しており附言することは何もないと大見得切りたいが、関西方面諸賢は何のことかお分かりになるまい。京都だ…

注目すべき人々との出会い

とは神秘家グルジェフの自伝ですが。<大いなる知恵>を求めて様々な地を旅して、「注目すべき人々」と出会うわけですね。web上である種の混沌の中に茫漠と触れ合っていた人の輪が、核となるイヴェントを契機に整然たる人間関係になる、という得難い──のかど…

幻想の二輪

モト・グッツィという会社はいかにもイタリアのメーカーらしく、数十年も前からとうにマスプロダクツの論理の元に世界規模で生産調整されているところの自動二輪車(以下「二輪車」と略称)という工業製品に対して胡散臭い匠気をもって対峙する姿勢を延々改…

翁話

近鉄とは河内の国のチームであって、摂津のチームであるBWとは全くその出自・性格を異にしている。かつては和泉のチームである南海が両者のはざまで純粋な大阪を表象していた。翻って考えるに、阪神なるものは全国ブランドであり、関西全土に君臨している超…

夜間飛行機

暗黒の底にぽつりぽつり直径1センチほどの穴が開いているのだが、すべて野球場である。都市部を過ぎ、山中に入ると、見渡すかぎりの闇の底に、地球の窓でもあるかの如く、ほぼ50センチ四方にひとつといった割合で、穴が開いているのだ。見た目のサイズで言っ…

都ノ駅家ニテ異形ノ者ニ遭フ事

夜半の東京駅、吐き出されるように新幹線から降り立つと、ホームのゴミ箱に延々長い行列ができて、みな粛々と缶ゴミ弁当ゴミ分別して捨てている。マナー良好と言うべきなのだろうが、ビッグ・ブラザーに馴致されたる風情なきにしもあらず。と思う。先のワー…

西行

夕刻、新幹線に。東京駅でお供のひとつとして「en-taxi」5号を買う。結構箴言あり。「こういう世間話をきちんとできるところが浅田彰の凄いところだ。高貴という形容が似合う、数少ない現存日本人である。愛子内親王が立太子する場合には、教育掛に任命する…

みりたり日和

九段下、俎橋の欄干から桜花で覆い尽くされた日本橋川の川面をなんとなく覗き込んでいると、通りすがりに私の顔をちらりと盗み見、何事かと視線を川に落とす人もある。九段会館の方角から歩いてきたステッキの老人が私の前で足を止め、靖国の桜ですね、と一…

高円の山の桜はいかにあらむ

夜の上野公園の桜は全山に張り巡らされた真赤な提灯に照らされなんとも淫靡な風情で、その灯下にとぐろを巻く人また人、人、人よ。辺り一面薄暗いピンク色の中に蠢く人々の狂態。聞きしにまさる物凄さだ。考えてもみよ。なにしろ酔っぱらいが数十万人いるん…

ヤンキー、編集者になる

と書いてみたかったのだ。流行ってるらしいし。しかし半ば本当である。いやヤンキーの方が。「編集者」の方が当然ながら嘘くさいのである。「日本人の半分は『銀蠅的なもの』を必要としている」と喝破したのは故ナンシー関であるが、こう宣告して去っていっ…

60年代テスト

嵐山光三郎の『口笛の音が聞こえる』(新風舎文庫)を知人が貸してくれて、まあ60年代の青春、あるいは当時の平凡社の有様を描いた内容も興味深いんだけれども、その中に「ナジャと呼ばれる女の32の条件」なるものが掲げてあって(『ナジャ』とはアンドレ・…

記憶と

S社の「小説S」増刊、警察小説の特集号のためにある便宜を図ったら、K副編から当該号が送られてきたので、読み耽る。「ちらりとしか紹介できずに恐縮」とのことだったが、まあこんなもんだろう。ミステリを読む機会が滅多にないから、当代売れっ子の短編…

山紀行

雲ヶ畑というのは幻のような地名である──と言ったところで京都全体が人の住むのも疑われるような儚い地名で満ちているわけだが、とりわけ仙人の夢想じみた名を付されたこの地はやはり洛北の山中にあって、いま私の目前には、慎ましく杣仕事を生業としている…

必殺案内人

月曜日のことだが、自転車でフラフラ都立野川公園の前を通り過ぎていると、門前の横断歩道を渡った辺りに少し人だかりがしている。何かと思って近づけば、近藤勇先生生誕の地の史跡に観光客がいるのであった。大河ドラマってのは、たしかにスゴイんですな。…

此岸過迄

風景が一点に、遠近法を強調するように消失点に向け消えていくような場面に遭遇すると、どうしてもカメラのシャッターを切ってしまうと云った人がいた。わかるような気がする。日本国における日常生活で、そのようなスケールの場に身を置くことはあまりない…

歳月と

慌ただしく実家を立つ正月明けの玄関先で、靴箱の上に置かれた鏡餅を眺めていた父親がふと思いついたように顔を上げ、そうじゃ、あと2年ぐらいで会社を閉めることにしたで、と言い残し、言い残したと思ったらもう定位置の炬燵へ戻っていった。もう表にはタク…

どうよ自分、とキムタクは言った

BSデジタルハイビジョンの「松田聖子カウントダウンライブ」など見て新年を迎えたりしている私である(しかも結構楽しんで)。もはやエグみしか残存していないようにも見える彼女にも、共に春秋を過ごしてきた年月を考えれば、ある程度の思い入れを自らに許…

会社の終わりとハードボイルド・ワンダーランド

というわけで、会社納めである(仕事納めにあらず)。一年前も全く同じことを書いている。サラリーマンの日常に変化があってたまるか。昨年も一人きりになって錯乱し急速潜航中にバルブを開けたりして種々の修羅場を惹起したわけであるが(12/27日記を見よ)…

渡河作戦に臨む

某大大学院にちょっと顔を出していた頃の学生さん、N君と久々に再会。会食歓談。論文ネタ2本発表してもらう。なかなか面白い。歴史学の社会学化について感想を述べるが、文献史料操作中心にこつこつやる学術は全く孤立化の様相を強めるばかりで、孤独感を訴…

本日の会話から

「また戦争の話でしょ先生……もうやめましょうよ……」 「いつまでも言い続けるぞよ。冷戦が終結したあの頃にな、歴史が終わったと勘違いした者が続出したが、結局新たな「戦前」が始まってたに過ぎんということがようやく明白になってきた訳じゃからね」 「臨…

紙爆弾テロ

日本ムスリム協会が、会社宛に突然荷物を一箱送りつけてきた。当然の事ながら弊社にはイスラム教徒はいない(はずである)。時節柄、偏執長は荷物に不審の目を向け、「あれだろ、アルカイダは日本も標的にするって言ったんだろ、怖いなおい大丈夫か」とウロ…