60年代テスト

嵐山光三郎の『口笛の音が聞こえる』(新風舎文庫)を知人が貸してくれて、まあ60年代の青春、あるいは当時の平凡社の有様を描いた内容も興味深いんだけれども、その中に「ナジャと呼ばれる女の32の条件」なるものが掲げてあって(『ナジャ』とはアンドレ・ブルトンの著作。嵐山氏曰く「『ナジャ』は、不良読本のひとつで、それにちなんだナジャという女子学生は、どこの大学にも一人はいるのだった」)、思わず術中にはまって笑ってしまったので、以下記録しておく。

1.美人であること(これ絶対)
2.あまり美人すぎないこと(これ絶対)
3.ブルトンや、トリスタン・ツァラを好きであること
4.ニーチェ嫌い(読まずに最初から嫌っている)
5.ジャズ好き(あるいは、ジョン・ケージ一味でも可)
6.スポーツ音痴、とくに野球がわからない
7.酒飲み、とくにハイボール
8.煙草を吸う
9.サルトルを読んでいても、理解していない
10.映画は、ゴダール、ダッシン、ヴァディム、アントニオーニ、ロージ、カワレロビッチ、小津安二郎を好み、ブニュエル黒澤明をバカにする
11.座頭市映画が好き
12.映画を見てよく泣く
13.映画を見てよく笑う
14.映画を見てよく眠る
15.概して黒系統の服を好む
16.髪の毛に、ときどきフケがある
17.迷信好き
18.借りた金は返さない
19.気が向けばやらせてくれる
20.一度やってもしつこく追ってこない
21.それでもときどきやらせてくれる
22.うつろな眼
23.そのくせ情熱的な眼
24.青山の草月会館の催物へ行く
25.下宿で一人
26.日によって性格の変化が大きい
27.他の女をバカにしている
28.自分もバカにしている
29.そのくせ気位が高い
30.現代思潮社の本を好み、岩波書店のものを嫌う
31.セザンヌを好みモジリアニを嫌う
32.ときどき行方不明となる
33.涼しさがある
34.演劇はベケット、小説はビュトールとロブ=グリエ

とまあ、こんな感じ。「男性/女性」のシャンタル・ゴヤみたい。どうでしょう、貴女は60年代に生を受けていれば、かの時代の美神となれたでしょうか。