西行
夕刻、新幹線に。東京駅でお供のひとつとして「en-taxi」5号を買う。結構箴言あり。
「こういう世間話をきちんとできるところが浅田彰の凄いところだ。高貴という形容が似合う、数少ない現存日本人である。愛子内親王が立太子する場合には、教育掛に任命するべきだろう。」(福田和也)
笑いと共に、ハゲドウ。
「ちょっとばかり左足をひきずって歩いた。正直に告白すると、みんなで安土城址を頂上まで登ったとき、左膝が降りる途中からあやしくなった。翌日、湖東三山の金剛輪寺で仏足のお守りを求めたので普通に歩けるようになった。」(磯崎新)
先日知人の膝に女の幽霊が取り憑いたという話を聞いたばかりである。どうも膝というポイントには霊的なとっかかりがあるようですな。
「応挙は若い頃に眼鏡絵という一種のカラクリ絵を描いていますよね。一番最後に展示してあったけど、しかもスイッチを入れると夜景が灯ったりという仕掛けもあって、ああいうカラクリの感覚と絵を描く感覚が、同じ人間の視覚を使うものとしてつながってたんじゃないかという気がしたな。」(大竹伸朗)
応挙の眼鏡絵の遠近法はモノによってかなりの乱れがある。彼ほどの手練れが、あきらかに無様なものを描いているのは何故か。どうもひっかかっている。
「深沢さんは例えば『公害はいいね』と言っていた。深沢流では、『公害は、自然淘汰ですね』となるんだな。僕は『楢山節考』にも自然淘汰が根底にあると思うんです。『人間がうようよふえていくと、みんな困っちゃう。だから煙とかガスとか出して、弱い人間をみんな殺すんだよ。公害によって、どんどん弱い人間が死んでいくんだ』と言っていた。人間が生き残るための公害は、当然のことだと言う。雑誌に書いたら、とんでもないことを言うわけですよ。だけど、公害は自然淘汰だと言い切ってしまう、そういう人だった。」(嵐山光三郎)
ああ、深沢七郎になりたかった。今でもなりたい。しかし皆そうなのだ。
富士を越え、暗夜行路。
- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1971
- メディア: ?
- クリック: 29回
- この商品を含むブログ (8件) を見る