Idle Talk

選択と集中

江戸期の豆本の撮影のため、国会図書館まで赴く。途中、江戸川橋近辺で超絶渋滞に嵌る。 左手に石切橋を見たまま、微動だにしない。鏡花が尾崎紅葉の息子の子守をさせられてこの橋あたりをぶらぶら歩いていた時、ふと川を覗くと、川底をこちらと平行してゆら…

シット・インのことども

例によって、と言うべきか、休み前に体調急降下、風邪なのか何なのか、連休中ほぼ臥所の中で過ごす。2日以上世間との交わりを絶っていると、どうも自分はこの世で無用の者なのではないかという思いが頭上の空間にむくむくと大きく膨らむ感覚が現れる。この感…

いまここにある戦場

広島の路上で米兵が撃たれ重傷、男が乗用車内から発砲 26日午前4時ごろ、広島市中区流川町の市道で、乗用車を運転していた男が、前を歩いていた米軍岩国基地所属の米国人男性海兵隊員3人に向かって拳銃1発を発砲した。 男は車から降り、1人の胸に銃を突きつ…

本日の不届者(二人)

生徒に模造刀振り下ろす 「礼儀教える」と中学教諭 大阪市住吉区の市立大領中学で今年4月、2年生の担任の男性教諭(54)がホームルーム中、鉄製の模造日本刀を男子生徒の首に振り下ろす動作をしていたことが24日、分かった。 同中学によると、教諭は「生徒に…

本日の会話から

「林達夫と村山槐多が京都府立一中で同級生だったの知っとるか」 「またそんな山口昌男みたいなこと。興味ないすよ」 「そうかね。結構驚いたがな」 「しかし先生と、このパターンは久しぶりですね」 「君は仕事が遅いから、しょっちゅう会っとるような気が…

激情に流されて

「哲学の劇場」からメルマガ「哲学の激情」が届く。順調な発行ぶりは重畳至極だが、なんとか隔週刊ぐらいにならんかなァ。大変なのは重々わかっていながら、無論勝手な希望である。メルマガ紹介・登録ページを見ていたら、なんとメルマガ命名者が私だという…

さらに失う

余計なことかも知れないが、ニューヨーク・タイムズのサイード追悼記事の最初の版と現在webにのっかっているのを何の気なしに見比べていたら、いくつか異同があることに気付いた。最初の版にあった、彼が「ユダヤ防衛同盟」のテロ対象リストに上げられていた…

夜鳥

寒い。午前中、時折利用する近所の藪医者に赴く。この医者では、私が各種の薬を指定しなければならないのである。自分で治療しているようなものである。「今日はムコダインとPL顆粒でいいと思いますが」「あっソー」「3日分ほどいただけますか」「あっソー」…

似非剣ふたたび

綾瀬の東京武道館まで赴く。全日本剣道連盟居合道部会東京支部昇段試験会場、である。ぷはー。例によって時代錯誤の空気が漂い、傑作千万である。階段の踊り場に刀屋が店を開いており、なんか職人尽し絵の情景。目についた江戸期の無銘の新刀を一振、抜き払…

記憶との再会

夕刻、駆け込んだファミレスで、一人淡々と食事する小学四年生ぐらいの少年に出会う。毅然とした態度で、背筋を伸ばし、ゆっくりナイフとフォークを使っている。物悲しい。その風情から、もはやそれが毎度のことであると窺える。郊外の住宅地の夕刻であるか…

帰省中にて

実家の小さな書棚は、最早混交して、家族の誰が購ったものかわからぬ書籍類が無秩序に突っ込んである。以前も書いたような気がするが、我が母は私が失踪している隙に彼女にとっては紙屑同然の我が蔵書を疾風のように段ボールに詰め、ミッション系の児童養護…

盂蘭盆会in山嶺

終戦記念日、なぜか日本三景厳島神社の背景に聳える宮島随一の霊山、弥山の山頂で呆然としているわけだが、盆も盛りだというのに寒風吹き荒れ、人影もない午後5時半である。荒涼たるものである。正確に言うと、山頂から数十メートル下にある小振りな平坦地に…

本日飯田橋にてお好み焼きを食して突如甦る記憶

同級生のU君が、4トロ(新左翼セクト「第4インター」の通称)の機関誌を教室に持ってきて昼休みに見せびらかしていたので、ネタの張り合いに敗れるのが口惜しく、放課後さっそく広島大学横にあるウニタ書店に自転車を走らせた。左翼関係書籍が溢れる雑然とし…

夏の記憶ver.8.6

夏休み例年、この日の朝8時15分になると、市内中に鳴り響くけたたましいサイレンに叩き起こされた。夜更かし癖のつきまくった絶頂の時期、また暑さも絶頂の時期、窓から何から開け放って、汗まみれの浅い眠りの部屋を毎年、サイレンが突き抜ける。同時刻、平…

戦後教育の失敗@勝小吉

少年犯罪花盛りの昨今のようであるが、統計的には終戦直後の方が凄まじいだの、質の変化を見るべきだの、まあ御意見百花繚乱皆それなりに頷ける。しかし今日、勝小吉の『夢酔独言』(平凡社東洋文庫、平凡社ライブラリー)を読んでいると、戦後もクソもなく…

テレビに頽落

会社をサボって熱のある頭でテレビを見ていると、水戸黄門にまで腹が立つ。この脳天気な老人は、いつになったら幕府権力自体が内包している矛盾によって自らの直面する数々の困難が引き起こされているということに気がつくのか。延々繰り返される対症療法は…

愚人の回想

緊急の書き物があって駅横のありがちなコーヒーショップに飛び込む。全く以てこういう場所でないと原稿が書けないという、まことにありがちな、因業な体質なのである。あなたのお知り合いにもいませんか。しかし私の場合多少重傷気味で、まあたとえば学生時…

拮抗を超えて新しい未来へ

カープ=ヒロシマ聖戦機構からは「波状的自爆攻撃で裏切り者盡頭子に死を」というメッセージが、革命的鯉主義者同盟巣鴨派からは、「カープの弱点を隠蔽し賞揚し続ける日和見スターリニスト盡頭子を徹底殲滅する」という宣告が、大日本青年鯉軍宣揚会からは「…

阪神タイガースマジック点灯によせて

あの年、広島カープは2度目のリーグ優勝を決めようとしていて、夏休み明けの教室はどうにも落ち着かなかった。初優勝からしばらくの間が空き、しかもマジックナンバーの計算上、初めての地元における優勝決定という感激が味わえそうだったのである。9月末、…

再度人文資源を論ず

戦前の大都映画とか河合映画などというマイナー映画会社というのはなんとも、とらえどころのない活力というか、出鱈目さというか、精力に満ちあふれているのである。その辺の資料を少々整理しているのだけれども、20〜30年代の、映画史上は黙殺されている、…

尾道物語

不祝儀ありて尾道まで赴く。鈍行列車がゆるゆると滑り込んだ午後の田舎駅は、まったく、弛緩しきって物音ひとつしない。改札を抜けると、何者かがキュー出ししたかのように、静かに町の音が流れ始める。遠くから向島行きフェリーの汽笛が聞こえる。駅前のぬ…

いまひとたびのNeXTを

知人の中には某大学図書館の基幹情報システムの管理者のくせにハッカー/クラッカーであるとか、パソコンマニア上がりの某コンピュータ系版元編集長であるとか、まあ有難いことにそのような人々が存在してくれて、それらのかなり先鋭な連中が信じられんよう…

avec la collaboration de Jacques Tati

昨夕、先日も言及したジャック・タチの『プレイタイム』先行上映に赴く。午後9時開場の渋谷パンテオンにはかなり長い行列ができており、若い人が多く、この一連の上映を通じて新しい共通認識ができるんだなあ、という思いであった。一夜限りの限定上映、しか…

俺は結局パンクに生きることはできなかった

今朝、運転しながら、写真家のハービー山口氏がJ-WAVEに登場して80’sロンドンの音楽シーンの思い出を語っているのを聴く。洋楽ジャーナリズムがイギリスを中心に回り、わが国もバブルパワー全開で雑誌などガンガン海外取材ができた時代、ハービー氏の写真は…

看板力

「東宝日曜大工センター」は知られざるテーマパークである。というのは半分本当である。以前にも言及したが、大東宝は東洋のハリウッドたる調布周辺の各所に広大なスタジオ用地を持ち、戦後の映画黄金期には昼夜兼行で野外セットの建設と破壊をくり返し、創…

白く消えゆくもの

カレッタ汐留なるビルに赴く。かつての汐留貨物駅の再開発地に建つ話題のビルである。ジャン・ヌーベルらしい不定形のデザインが斬新だが、内部の構造があまりに複雑で、堂々巡りのカフカ状態に陥る。各所に手書きの案内図や矢印が張ってあり、モダンな通路…

本日の会話から

「じゃが軍隊ちゅうのは、一種の保守的な記憶装置だね……。イラク国防軍の高官たちの制服を見て御覧。大戦期の英国軍の軍装そのままだよ」「ふうむ。イギリスがイラクにこだわるのは、言ってみればブッシュに勝手にやられてはたまらんという、かつてこの地に…

戦の記憶

『つげ義春の温泉』(つげ義春著、カタログハウス刊)を読んでいて、福島県の会津地方では彼の訪れた温泉の多くに私自身も逗留していた事に気付き、ちょっと驚いた。というのも、本書中に再録されたほとんどの漫画を読んだことがあったにもかかわらず、その…

熊、そして青山

新宿伊勢丹まで、知人Oさんの手作りテディー・ベアー展示会に赴く。 Oさんはいなかったが、2万円だの3万円だのという値札が付いていて、しかもほとんど御売約済の札がかかっていて、無知な自分は仰天する。デゥワー。いままで只でもらってしまっていた。い…

本日の会話から

「WTCの再建案がリベスキンドのやつに決まったそやねえ。どうかな、ユダヤ人の持つホロコーストの記憶と「9・11」が危うい政治性で一直線に繋がったゆう感じかな」「うーん、これ、むずかしいっすね。実際彼の建築はプロジェクト毎に評価しなきゃいけないん…