白く消えゆくもの

カレッタ汐留なるビルに赴く。かつての汐留貨物駅の再開発地に建つ話題のビルである。ジャン・ヌーベルらしい不定形のデザインが斬新だが、内部の構造があまりに複雑で、堂々巡りのカフカ状態に陥る。各所に手書きの案内図や矢印が張ってあり、モダンな通路も路地同様の猥雑さ。

最上階のAQUAという店から、寒雨に白く煙る存在感の薄い東京を見下ろす。この風景は何かに似ているなあ、とずっと考えていたが、寝床に入ってから、長谷川等伯の国宝『松林図屏風』にうり二つであることに気付く。