再度人文資源を論ず

戦前の大都映画とか河合映画などというマイナー映画会社というのはなんとも、とらえどころのない活力というか、出鱈目さというか、精力に満ちあふれているのである。その辺の資料を少々整理しているのだけれども、20〜30年代の、映画史上は黙殺されている、そもそもネガもポジも欠片も残存していない映画たちがなんとも愛おしいと思う今日この頃である。曰く『全部精神異常あり』(タイトルから決まったんだろな……)、曰く『踊る霊魂』(怪作『死霊の盆踊り』のルーツか……)、曰く『たぬきと精神病患者』(……)、などなど、濃厚に見世物の要素を残存させた作品群が量産され、その大半が失われた。

映画は映画だけに所属するものではない。全ての人文資源は、先ずはその価値を問わず、有無を言わさずアーカイヴ化することが重要であるが、いまだに有効なシステムは存在しないし、この先も誕生しないでしょう。辛うじて古書店の市場の論理がかぼそく押さえている部分があるのみ。あなたの捨てているゴミの大半は、遺憾ながら100年後の宝なのである。