本日の会話から

WTCの再建案がリベスキンドのやつに決まったそやねえ。どうかな、ユダヤ人の持つホロコーストの記憶と「9・11」が危うい政治性で一直線に繋がったゆう感じかな」
「うーん、これ、むずかしいっすね。実際彼の建築はプロジェクト毎に評価しなきゃいけないんじゃないすか。僕は建築は単純に形態だという素朴主義ですから、今回の案はいただけないなあ」
「まあそうかもしれんが、あれだけナイーブな政治性を建築という場にもちこんで来るのもこれまた素朴主義じゃね。素朴主義に何億ドルという大金が投じられるのは現代において建築だけだわ。そういう意味じゃあリベスキンドはすぐれて現代的ですよ」
「そうかなあ。まあ僕は最終選考7組に残った中じゃあ、べつに日本人の肩持つわけじゃないけど、妹島和世+西島立衛チーム案が良かったなあ。あの幻影みたいなビル群がマンハッタンに建ち並ぶの見たかったなあ」
「じゃがあの繊細すぎるフォルムは、アメリカ人にとっちゃあツインタワーの幽霊みたいに見えると思うぞ。特にあの端っこにある縦方向に揺らいでいるビルなんざ、『不安』ちゅうタイトルつけられちまうんじゃないんかね」
「私毎日『調布駅北口交番』っていう妹島和世設計の作品を見ながら通勤してるんですよ。これとWTCが同じ作者っていう痛快な場面を期待してたんだがなー」
「ワハハ、そりゃたしかにオモロイ。なかなか世の中うまくいかんな。しかしこれでいまや安藤忠雄リベスキンドっちゅう、2大シロウト建築家に世界の建築界は席巻されることになったわけやな。これもオモロイな」
「シロウトっていうのは大胆ですな。まあまともな建築教育受けてないっていうことではシロウトですか」
「去年できた安藤忠雄設計の『石川県西田幾多郎記念哲学館』は見に行ったかい」
「んなもん行けるわけないじゃないすか。中野の哲学堂公園でサボって思索するのがせいぜいですよ」
「まあ哲学堂公園も哲学テーマパークとしては一定の評価を与えるが、哲学の博物館てのも日本初だろう。ここの喫茶室の名前は凄いぞ、その名も『テオリア』じゃ」
アリストテレスかよ!」(三村風に)
売店には『無』の字を大書した哲学Tシャツも売ってるらしいぞ」
「売るのかよ!」(三村風に)