見知らぬ評論家

インフルエンザによって奪い去られてしまった時間を悼みつつ、頭痛の残る頭で午前中スタージョンについて話していて、午後鶴見の古本屋で『コスミック・レイプ』(サンリオSF文庫)を発見し、買ったはいいが高い! ……まあサンリオだから仕方がない。

中を見ると、扉の裏に鉛筆の書き込みがある。

「翻訳については、本書の全体を覆うもやのかかった(焦点のぼやけた)ディテール描写が、決してスタージョン自身の文章自身によらないことは指摘しておきたい。訳文にはややそそっかしさが目立つ。スタージョンの文章は思索的で、その描写はいってみればソフトフォーカスだが、これほどぼやけたものではないことは、一言いっておきたい。訳文は読みやすいが、SF的な概念の出てくるところではかなり怪しくなる。」

読む前に、この文章に呪縛されてしまう。しかし電車の中で読んでみるとおっしゃる通りで、なかなかにこの本の持ち主はプロの読み手だったようだ。古本買いには、こんな愉しみもある。ところで本書は宇宙の強姦を描くという怪作中の怪作であります。

コスミック・レイプ (1980年) (サンリオSF文庫)

コスミック・レイプ (1980年) (サンリオSF文庫)