説教

中学生相手に熱弁を振るう。
「きみたちは全てをムカツキに還元してしまっているが、ムカツイている時点で対象のムカツキに染められているわけで、ムカツク行為によって結局問題の内部にひきこもってしまっているのではないか。メタレベルから問題を見ない限り、解決はないのではないか。というよりも、ムカツクとはまずもって解決を放棄する姿勢ではないか」
反論。
「全ての解決の道が不可能であることを直感できる時にこそムカツキが生じるのであって、そもそも問題の前提が誤っている。純粋に内部の問題なのであるから、メタレベルに登れるとしたら、その時点で問題が消滅することになる。メタレベルを設定すること自体無─意味である」
再反論。
「どうして不可能であると言い切れるのか。その意見自体、『解決を放棄する姿勢』という指摘を肯定しているのではないか。それとも、ムカツキは単に生活上の態度であって、そこに何も問題はないということなのか」
再々反論。
「ムカツキは存在そのものに対する嫌悪であって、態度ではない。ムカツキ全てを一般化して語ることはできない。あるのは個々のムカツキであって、ムカツキ全般を嫌悪するあなたの意見こそ内的なムカツキそのものではないか」
息切れ。ヴィトゲンシュタインに対するラッセルの気分がわかったような気がする。同情する。