畸人怪人神保町に現る

例の名物店長S氏の仕切る神保町T堂書店まで、山口昌男VS高山宏トークショウの為出張る。一応それらしくウロウロするが、S店長に、予約無い人の入場はどうすんのとツッコまれ一瞬答えられず、ドヤされる。

こういうイヴェントではいつも集客状況にやきもきするが、開場すると席はほぼ埋まり、一安心である。高山氏は相変わらず着脱式サングラスにアロハ姿で怪人風。山口翁は先年倒れて以来いろいろ話は聞いていたが、概ね元気そうであった。

対話が始まると、まあ対話と言うよりは一方的な喋り合戦だが、高山氏は一貫して山口オマージュを語り続け、今回の本を賞揚し、役割をこなしてくれたので概ね宜しかった。しかし話を聞いていて直観的に思ったが、山口昌男という学者は結局人類学者としてよりも近年の『敗者の精神史』に連関する仕事で記憶される人になるのではないか。人類学の現状を見ると、どうもそのような気がする。

えーっと、えーっとを繰り返す山口翁ののんびりした喋りっぷりを見ていて、どうも誰かに似てるなァと考えてたら、晩年の古今亭志ん生であった。「んー、実にどうもこの、母権制ってぇやつァ、ヤッカイでしてネ。なンだか今日び、ンなものァ無かったことにしてえ奴も多いようだが、エー、そうは問屋が卸さない。昨日も女房が『あんた今どき何だい、母権制母権制って、ンなことばっかり言ってるからいつまでたってもウダツが上がらねえってんだよまったくあんたってえシトは』なんて言やがる。あっしも気が短けえモンだからついカッとなっちまってネ、『るせいやい、おめえはバハオーフェン読んだぐれェで大きな面ァすんじゃねえ、現場てェものを知らねえから簡単に御宗旨を替えちまうんだよう』て言ってやった。んー。」きりがないのでやめておくが、大体こんな趣旨のお話でした。