古書宴

このところ、古本をめぐるあれこれを気の利いた語り口で雑誌やメルマガ等に開陳しているN氏と一夜、酒席を囲む。N氏宅には毎月30冊を超える古書目録が届くというのだから、その様や壮観である。なにしろ買った本など開く暇もなく、目録を読んでいるだけでまた次の目録が届いてしまうという古本地獄である。いや天国か。まあしかし、似たような事象はあたしの周囲でも発生してないわけでもないが。複本購入地獄に堕ちた某氏とか……いや貴殿の事じゃありませんて。

私は旅先などで見知らぬ古本屋に入ったりしたら、最低限均一台の百円文庫でもいいから必ず一冊は買う、と自らに義務づけている。というかほとんど均一台だが。目録を送っていただいている(ほんの少しの)古書店も、べつに買わなくても延々送ってくれる店の方が多いのだが、どうも買わないと悪い気がしていつも悶々とする。私だけかと思っていたらどうやらみなさん悶々とされるらしく、N氏によると「義理買い」という言葉があるんですってね。さらにこの業界スゴイことに、古書店の方では数冊でも注文歴のあった客だと、どれが義理買いだかわかるそうである。いやーマイッタ。思い当たる節あり。私は新刊書店には昔から冷淡で、平気で本1冊読了して出てきてしまったりで業界人の風上にも置けぬ困ったちゃんなわけだが、どうも古書店には、なんでかなあ、こう、生活とか風景とかが、深い色づきで見えてしまうんである。みなさんそうなんでしょうが。

N氏はもうすぐ初の著書を上梓する予定である。古本系、結構きてます。しかし全ての本は古本になるんだよなあ。意味不明の感慨ですが、ちょっと愚痴っぽく。