バラケイ

現役最長老の著名写真家H氏と宴会。久々の大物で緊張するが、気さくなおじちゃんであった。というよりも長年の教育家生活で、人格が完全に教授モードと化してしまったようである。60年代、三島をゴムホースでぐるぐる巻きにした写真とか撮っていた時代にはもっと難しいタイプだったのだろうか。酔うほどに話が写真史入門講義じみてくる。んなこと知っとるっつーの。

彼の写真には、独特の演劇的身振りが強く感じられる。というよりは、写真のありようが全くタブロー的でない連続感に満ちていると言った方が、「演劇」という語の強い価値観から離れるだけ正確だろうか。「組写真」というカテゴリーとも違う形態で、常に強く演出され、編集され、束として、順序をもって提示される。そのストーリーは肉厚で濃厚である。土方巽を撮った一連の作品はその特徴が強く出ている。あまりに「日本的」なその画面と演出性ゆえ、海外での評価が非常に高い。むろん日本でも高いのだが、その濃厚さは評価と好みが別れるところかもしれない。

宴たけなわ、土方巽の話になり、彼の葬儀で棺を担いだ話になる。一瞬話を止め、目が中空をさまよって、ああ、あの唄、歌ったんだ、と、出棺時の物寂しい情景を消沈してぽつりぽつりと語る姿、しかしもう、あれから何十年経つたというのか。いまだ沈鬱になるほど、愛していたんだなあと、情の細やかさに少々感動する。そうだこのひとは、今年のアルルのフェスティバルに、まだ森山氏をルーキーみたいな扱いで推薦しているのである。この期に及んでまだ売れない弟子のように心配しているのだ。稀有な話である。

帰りがけ、ふと生年を尋ねたら、父親と同い年だった。