Photography

唯物論の夜

日暮れ方であるが、三鷹の禅林寺近くである。 寒風吹きさぶ人影少ない寂しい街路、得体の知れぬ薄暗い店の奥に古びた腹話術人形が投げ捨てるように置かれているのを脈絡もなく目撃して(あたりまえだ)、妄想スイッチが入るようでなんともいえぬ。出来過ぎで…

アンリと

アンリ・カルティエ・ブレッソン死去。生きてたのか!という感想も多かろう。95歳でありました。ブレッソンの写真もまた居合斬りスタイルであるから、その職人性の高さは日本人好みである。マグナムの設立に関わった事実と、例の「決定的瞬間」というターム…

バラケイ

現役最長老の著名写真家H氏と宴会。久々の大物で緊張するが、気さくなおじちゃんであった。というよりも長年の教育家生活で、人格が完全に教授モードと化してしまったようである。60年代、三島をゴムホースでぐるぐる巻きにした写真とか撮っていた時代にはも…

カメラ香具師

日曜、好日、好天。ボロカメラの実験のため、近隣を周遊してみる。例のフレクサレットである。おそらく喫緊に処理を要すらしいもろもろを机上に置き去り、夜逃げのようにこそこそと出てゆく。カメラを持つと、何故かこそこそしてしまう。理由はわからない。…

弟子、その他の物語

先日八重洲大丸での「中原淳一展」を念のためチェックしたあと、有楽町マリオンまで足をのばして「近代写真の生みの親 木村伊兵衛と土門拳」展を参観したわけだが、どうにもこの「近代写真の生みの親」という意味がわからない。どう転んでもこの二人は「近代…

シンポ。そして暗い予言。

午後麹町JCII(日本カメラ財団)にて名取洋之助研究会のシンポジウム。重い本を引きずりながら持ってゆき、展示する。皆さん結構見てくれる。しかしずっとじんじん痺れて手がちぎれそうだ。紙というものは、重いものなのである。名取の写真は、端的に言って…

忙中閑ありて

終日、家に籠もる。先日赴いた、横浜美術館における「中平卓馬展」で買い求めた『中平卓馬の写真論』(リキエスタの会刊)を集中して読み、考える。中平卓馬の写真論作者: 中平卓馬出版社/メーカー: 《リキエスタ》の会発売日: 2001/04メディア: 単行本 クリ…

「大道」とは禅語からとられたそうです。

「森山大道──光の狩人」展観覧のため川崎市民ミュージアムまで赴く。日本における写真表現が一直線にミニマルなものに傾斜していくのと歩調を合わせるように、彼の存在感が増していったのが、この十年間だったように思うんですが、いかがでしょうか。 もはや…

ドモンとニッポンとヴィデオテープ

NHK仙台のディレクターY氏から、ヴィデオテープが送られてきた。以前当方も取材されたものが、先頃放映されたらしい。早速拝見。私のところで撮った絵は当然カットされているだろうと思って気楽に見ていたら、突然画面に自分が現れたのでかなり焦った。しか…

雨中転々

昨日に引き続き写真美術館にてワークショップ。川田喜久治の写真集『地図』(1965)が海外のオークションで現在100万円前後の値が付くと聞き、驚愕。現在60年代の日本の写真、及び写真集は世界的に注目されており、今年などはもうすぐアメリカで戦前から現在…

伊兵衛翁リスペクト

木村伊兵衛『小型カメラ写真術』(朝日ソノラマ刊)を読む。昭和初年に刊行されたものの復刊だが、一読、驚くほど明晰な文章に引き込まれる。この人はごくあっさりしたスナップの名手であり、その手法に理論的バックグラウンドを与えるなどという行為はその…

眠り

午後2時から激しく昼寝する。6時過ぎ起きて呆然。『写真集を読む2』(メタローグ刊)に、伝説の写真家中平卓馬──数年前事故で記憶喪失に陥った──の最近の日記が一部掲載されていたが、連日昼寝に入った時間と目覚めた時間のみが記してある。判で押したよ…

日本近代写真

『日本近代写真の成立』(金子隆一他著、青弓社刊)を読む。写真が果たして芸術たり得るのか、という問題に、日本の写真界は長く苦しんだ。今もそうかも。欧米諸国の写真アーカイブの体制、大学教育の姿勢なんかをみると、やはり写真に対する体制が根っこか…