誤植談義

電車に乗っていたら、ふと「沿線病院案内」という広告に目がとまった。何の気なしに眺めていたら、ある病院の案内に「人間ドッグ」とある。人面犬か。しかし試みに検索したら、「ドック」374件に対し犬派が13件存在する。一定の勢力を保っているのである。

かつてサンリオ文庫という、今では伝説となってしまった文庫が出版界には存在して、そのカリスマ的なラインアップで若い読書家たちを熱狂させていた。今でもスタニスワフ・レムの『枯草熱』などは古書価で数万円というとんでもない値がついている。文庫ですよ。

で、そのラインアップについての話は日を改めるとして、今日のお題はその中の、とある作品の最後の方、あとがきのさらに後ろの話である。文庫本の最後にはよくその文庫の最新作とか、ずらずらっと2、3ページほど目録みたいなものが付いてるでしょう。そこを見ていた私はその中の何冊目かの記述に驚愕し、我が目を疑ったのである。作品名、誰々=作、誰々=訳、内容紹介、定価と機械的に並んでいるわけだが、中に一箇所、黒々と、「川本三郎=誤訳」となっているのである。ホントなんである。一瞬、自分が発狂してしまったのかと思ったぐらいである。誤植にしては悪意ありすぎないかしかし。

いまだに知人のK氏が後生大事にこの本を保存しているので、決議さえあればいつでも査察に応じることができる。ホントなんだよ。業界でもあまり知られていない珍事だが、出版史上に残る誤植であろう事は間違いない。川本三郎氏に御意見を伺いたいところですなあ。もう時効ですから。