The Press

一句進上

『九十歳、青山光二が語る思い出の作家たち』第六回 大川渉(「ちくま」2004.6 第399号 筑摩書房刊)より丸ビルの五階にあった中央公論社の入り口近くの応接室である日、青山と担当編集者高梨が、ゲラの仮名遣いのことで言い争いをしていると、永井荷風が入…

∀組版論

先日の花見の宴で同席したM印刷の「全身営業家」T氏に、「おたくでやってるアクマ書房さんの単行本で『テクストはマチガエル』ってあったじゃないですか。あれ本文の組版、なんか端正でしたよね。書体なんだったかわかります?」と問うと、「そうあれあれ、…

『書店風雲録』風雲録

「とにかくリストなんだよ。リスト作ってよ。それでフェアやるから」と、イマイズミ氏は繰り返した。同席していた私の同僚フジワラ編集氏の方を盗み見ると、バッチリ目が合い、オマエやれよ、とその目が語っている。そりゃ営業の仕事じゃないんじゃないの、…

組版論

InDesignとQuarkExpressの設計思想の相違は、編集者からみればネイティブのワープロにあるような原稿用紙的発想があるかどうかという点に尽きるが、DTP技術を発展させデファクトスタンダードになっていたQuarkが、結局伝統的な日本語組版の思想を破壊してし…

誤植談義

電車に乗っていたら、ふと「沿線病院案内」という広告に目がとまった。何の気なしに眺めていたら、ある病院の案内に「人間ドッグ」とある。人面犬か。しかし試みに検索したら、「ドック」374件に対し犬派が13件存在する。一定の勢力を保っているのである。か…

妄想閣残念堂

某所で明治の文献をひっくり返していると、昔の版元名の無体ぶりに笑いが止まらなくなって仕事にならん。「岡本偉業館」「天下堂」「報告堂」「吐鳳堂」「努力世界社」「裁縫成功舎」等々、誇大妄想狂の怒鳴り合いのようだ。今となっては、これらの愛すべき…

小林勇『蝸牛庵訪問記』(講談社文芸文庫)を読む。岩波書店の名編集者の、幸田露伴との密接な交流の記録である。今では信じられないほどのことだが、出版社が新卒の大卒社員を採用し始めたのは、ようやく昭和2年になってからであった(円本で儲けた改造社が…