2003-06-01から1ヶ月間の記事一覧

尾道物語

不祝儀ありて尾道まで赴く。鈍行列車がゆるゆると滑り込んだ午後の田舎駅は、まったく、弛緩しきって物音ひとつしない。改札を抜けると、何者かがキュー出ししたかのように、静かに町の音が流れ始める。遠くから向島行きフェリーの汽笛が聞こえる。駅前のぬ…

晴雨は責め絵だけではありません

伊藤晴雨の『文京区繪物語』(昭和27年・文京タイムス社刊)を古書店で買って読んでいたら、講談社を称して「“講談社末期の水も野間清治”と或る人が云ったのは、偉人野間清治氏に対して怪しからん次第である」という一文があって、腹抱えて笑ってしまった。…

ドモンとニッポンとヴィデオテープ

NHK仙台のディレクターY氏から、ヴィデオテープが送られてきた。以前当方も取材されたものが、先頃放映されたらしい。早速拝見。私のところで撮った絵は当然カットされているだろうと思って気楽に見ていたら、突然画面に自分が現れたのでかなり焦った。しか…

天皇の世紀

『「天皇」と呼ばれた男 撮影監督宮島義勇の昭和回想録』(山口猛編・愛育社刊) はなかなかの大冊で、手強そうな外観だが、よく作り込まれていて読むのには難渋しない。かつて日本映画界に在位した二人の天皇のうち、黒沢天皇はあまねく知られているが、も…