2004-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ただ刻んでいた男のこと

art

渋谷の松濤美術館に赴く。「谷中安規の夢」展を参観。展観のサブタイトルに「シネマとカフェと怪奇のまぼろし」とある。昭和初期の彼の作品には版画という表現が本質的に備えている洒脱な芸術性そのものが独自の幻想性と相俟って強く感じられ、30年代の空気…

山紀行

雲ヶ畑というのは幻のような地名である──と言ったところで京都全体が人の住むのも疑われるような儚い地名で満ちているわけだが、とりわけ仙人の夢想じみた名を付されたこの地はやはり洛北の山中にあって、いま私の目前には、慎ましく杣仕事を生業としている…

必殺案内人

月曜日のことだが、自転車でフラフラ都立野川公園の前を通り過ぎていると、門前の横断歩道を渡った辺りに少し人だかりがしている。何かと思って近づけば、近藤勇先生生誕の地の史跡に観光客がいるのであった。大河ドラマってのは、たしかにスゴイんですな。…

此岸過迄

風景が一点に、遠近法を強調するように消失点に向け消えていくような場面に遭遇すると、どうしてもカメラのシャッターを切ってしまうと云った人がいた。わかるような気がする。日本国における日常生活で、そのようなスケールの場に身を置くことはあまりない…

歳月と

慌ただしく実家を立つ正月明けの玄関先で、靴箱の上に置かれた鏡餅を眺めていた父親がふと思いついたように顔を上げ、そうじゃ、あと2年ぐらいで会社を閉めることにしたで、と言い残し、言い残したと思ったらもう定位置の炬燵へ戻っていった。もう表にはタク…

どうよ自分、とキムタクは言った

BSデジタルハイビジョンの「松田聖子カウントダウンライブ」など見て新年を迎えたりしている私である(しかも結構楽しんで)。もはやエグみしか残存していないようにも見える彼女にも、共に春秋を過ごしてきた年月を考えれば、ある程度の思い入れを自らに許…